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仙台家庭裁判所 昭和28年(家イ)411号 審判 1954年5月15日

申立人 村河和子(仮名)

相手方 川田一郎(仮名)

主文

申立人と相手方との内縁関係を解消する。

相手方は申立人に対し慰藉料金十万円を内金五万円は昭和二十九年五月二十日限り残金五万円は同年十月二十日限りそれぞれ申立人住所に送金して支払うこと。

相手方は申立人に対しその所有の箪笥(衣類在中)一棹、鏡台一個、ミシン一台、張板二枚、断板一枚、下駄箱一個、洗濯盥一個、竹つづら大少各一個、洗板一枚、名入提灯一張、針箱一個、洗面器一個、長持一個を昭和二十九年五月二十日限り引渡すること。

本件調停費用は各弁自とする。

事実並理由

申立人は「相手方は申立人と和合し、速やかに婚姻届を出すこと」との調停を求め、その実情として陳述した要旨は、申立人は昭和二十七年一月○○日小林太一の仲人で相手方と婚約し、同年十二月○○日結婚式を挙げ、相手方の実父富男、実弟四人、実妹一人、実父の内妻等と共に同居し、夫婦生活をしてきたが、同二十八年一月○○日実父が死亡したころから相手方は申立人に生活能力がないから離別したい等と口外するようになつたが、申立人は一旦嫁した以上は左様な理由では離別されたくないので同年三月末頃親類、仲人を頼んで相手方を説得したので相手方は円満な家庭生活を営むことを承諾した。

しかし最近になつて相手方はまたまた離別話を持出してきたが申立人は相手方と別れる考えはないので本件調停を申立てた。なお相手方がどうしても申立人と和合できないとなれば別れるのも致し方ないが、申立人は昭和二十八年○月初旬頃妊娠三ヶ月の身を相手方よりのすすめで人工妊娠中絶の手術を行つた結果が悪く歩行の際腰痛を感じ身が回復して将来子供を儲ける希望がもてないので相手方に対して慰藉料として金五十万円のほかに相手方宅の前方にある相手方所有の宅地○○坪を貰いうけその地上に金五十万円位に相当する家屋を建てて貰つて居住し、更に毎月五千円位の生活費を支給して貰いたい旨を述べた。

相手方答弁の要旨は相手方は申立人の要求にはいずれも応ずることができない。申立人は相手方をことごとくその性格が相違するばかりでなく、家風に順応する意志がなく、実父死亡後数多い弟妹を指導して行く能力もないので申立人を離別したい。申立人の前記妊娠中絶の手術後○○大学附属病院でアレキサンダー手術を受けさせ、また山形県○○温泉に二十日間位湯治させたりしたので現在では健康が回復している筈である。相手方は金六万円位の慰藉料を支払う用意がある旨を述べた。

よつて当裁判所は調停委員会を開き、昭和二十八年十二月四日、同月十八日、同二十九年一月二十日、二月二十六日、三月十三日、同月二十四日、五月十五日の七回に亘り当事者双方に調停を試みたが、申立人は感情にのみ走つて妥結するにいたらず、調停成立しないものと認められたので、双方のため衡平に考慮し一切の事情を観て(特に参考人として○○大学附属病院産婦人科医師大○○三の申立人は将来妊娠は可能で腰痛も漸次解消するとの意見をきき)当裁判所医務室山本技官の申立人は無力性自己不確実性、性格特徴が顕著であるとの診断結果の報告を参酌して事件解決のため主文のとおり審判する。

(家事審判官 猪狩真泰)

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